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やってみる?オリエンテーリング ~地図と使い方~

オリエンテーリング(以下OL)の地図(以下O-MAP)はカラフルで綺麗でしょう。アルプスの山岳地図なども綺麗ですが、それとはまた違った美しさです。

APOC04 カザフスタン(A5) O-RINGEN92 スウェーデン(A3)
APOC94 ニュージーランド(A3変形) APOC98 中国(A3変形) 横浜の公園(A4)

では地図の説明をはじめましょう。

地図の表現: 黒色は道路や柵など主に人工的なもの、茶色は等高線や穴、凹地などの地形的なもの、青は川、池などの水関係に使われ、一般の地図と近い使い方です。それに対して広さのある領域に塗る色の使い方は、O-MAP特有です。

では順番にを見ていきましょう。詳しく説明すると大変な量になってしまうので、ここでは代表的なもののみを書きます。全て知りたい場合は「オリエンテーリング諸規程集」が都道府県オリエンテーリング協会などで手に入れられます。下に例をしめしますが、緑や黄色系の色はディスプレイによって随分違って見えますし、印刷した地図でも地図により違いがあります。ですので実際の区別は地図上の凡例を参考にしてください。

地図と現地: さて地図の表現方法はわかりましたが、これと現地とが対応付けられないと使えません。

上図の左列は対応付けは容易でしょう。道路は普通の地図と同様の表現です。注意すべきは小径、小径の上を進むときは問題なくても横断すると気付かないことも多いものです。また草や低木の多いところでは、道路でも、かなり接近しないと判らないこともあります。崖というと見上げるような大きなものとは限りません。ただ、黒表示の崖は通行不可なので大きめだと言えます。

中央の列はどうでしょう。開けた土地とは、公園の芝生広場や牧場の草地が代表的なものです。一般の地図と色の使い方が違うことに気付いたでしょう。一般の地図では平野が緑、山が茶色、高山は白というような色分けがされたりします。それに対して、O-MAPでは緑は人が通りやすいかどうかの表現になっています。うっかり通行困難なところに踏み込むと進むも戻るも大変になることもあります。緑の濃淡の区別は実際に経験を積まないとわかりません。また地図の作成者によるバラツキもあるし、地図を作成した季節と使う季節の違いでも変わるので、実際に使いながら判断基準を調整する必要があります。上図にはありませんが、白は最大速度で走れる森林を現します。OLをする人が「白い林」という事があります。それは別に白樺林をさしている訳ではなく、走れる林を言っているのです。明瞭な植生界とは、走行可能度とか、植物の種類が明瞭に異なっているのが判る境界のことです。

最後に右の列。湿地は少し注意が必要です。日本では廃田だったりして足を入れると抜くのが大変で時間的に大変なロスになる場所が多いです。一方スウェーデン南部などでは、湿地といってもすぐ下が岩盤で走り易いところが多くなっています。このように場所によってかなりの違いがあります。この例では輪郭がありませんが、黒い線で輪郭がある場合は、立ち入ると危険なことを示しています。

さて、いよいよ等高線。慣れない人が理解しにくいものです。地図には描いてあっても、現地にはそんな線は引いてないのですから判りにくいのも当たり前。同じ高さのところを結んだ線が等高線。等高線の高度の間隔は、日本の場合では5mが最も一般的です。地形の急峻な場所の地図では10m、平らな場所の地図では2mが使われます。この「等高線の高度の間隔」を「等高線間隔」と言います。O-MAPには等高線間隔が、縮尺とともに明示されています。また大会では事前に要項で知ることもできます。等高線は5本毎に太い線を使います。また、部分的に細かい地形がある場合、実線の等高線の間に破線の補助等高線を入れることもあります。

上図左のとおり地図上の等高線の間隔が混んでいるところは傾斜がきつく、空いているところは傾斜が緩いわけです。等高線を読むことにより、アップダウンを把握し効率的なルートを計画する、計画したルートを移動する際に細かい地形を見て自分の位置を把握する事が出来ます。

尾根、沢。尾根は両側が低くなっている線状の地形、沢はその逆です。OLをやったことがない人の場合、見晴らしが良くて回りの景色が良く見えるようなところが尾根、そして沢はその逆で水が流れているところ、と理解している事が多いでしょう。しかし、OLではずっと小さいものも尾根、沢として扱います。森の中でまわりが良く見えないようでも尾根、水がないようなところも沢です。上図の(B)は幅の狭い尾根、(C)は幅の広い尾根です。同様に(D)は幅の広い沢、(E)は幅の狭い沢です。下図左の丹沢の地図に対して、尾根(黄土)沢(青緑)を追加で記入したものが下右図です。全て描くと混みいってしまうので省略しており、まだまだ追加で描くことができます。この図を見ると判るように、普通は、尾根を示す線は高いところから低い所にかけて分岐していくのに対し、沢の線は合流していきます。

このように尾根、沢は方向性を持った線状の地形なので、道と同じように自分のいる場所を把握するのに使うことができます。

下図左のように等高線が閉じた線になっている場合、その中はほとんどの場合は高いところになりますが、右図のように低い場合もあります。このような場合を含め、高低が判りにくい場所では等高線の低い側にヒゲが付きます。

傾斜の変化点は位置の判断に使えます。断面Aの斜面上を移動するとして、現在地を判断しやすいのはどこでしょうか。(3)の地点はピークなので最も判りやすく、次は(2)傾斜の変化が激しいので次に判りやすく、その次が(1)。(1)は傾斜の変化はあるがそれほど大きくはないのではっきりしてはいません。そして(4)の部分は傾斜の変化がないので、傾斜の変化のみからでは斜面のどこにいるのか判断できません。

すでに説明したように、閉じた等高線で囲まれているところは高く、水のあるところは低いというのが判りやすい判断材料です。また水系が切れているところは普通は源流なので高いです。しかし、水が高いところを流れていることもあるし、水が地面に吸収されて消える事もあるので総合的に判断しましょう。下図(A)が高いのは判りますが、(B),(C)のどちらが高いのかは、この図内の情報のみでは判りません。まあ殆どの場合、(B)のところが沢になっていますが、右に向かって下がる斜面の途中に水路があることもあります。

地図上の等高線から立体的なイメージを描くのが難しいようだったら、厚みのある紙に等高線を写して切り抜き、重ね合わせてみるとイメージを描く練習になるでしょう。逆に粘土などで立体的な形をつくり、その等高線を地図にしてみるという練習も考えられます。

最後に立入禁止について。立入禁止の記号のほかに、人家の敷地、耕作地、果樹園が通常は立入禁止です。道に赤紫の×が重ねられている場合、その道は立入禁止です。

位置説明:さて、通過すべき地点であるコントロールはどんなところに置かれるのでしょうか。初心者向けクラスでは道の分岐や建物の角など、判りやすいところに置かれます。それに対し、上級者クラスでは尾根、沢、穴、植生界の角など道から離れたところに多く置かれます。ただ、上級者の場合でも、きちんと地図を読み現地と照合すれば位置を特定できるところに置かれます。なんとなく広い場所のどこかというような置きかたはしません。

コントロールに関する設置場所などの情報を書いたものが位置説明です。初心者向けクラスでは日本語で、それ以外は国際的に標準化された記号で書かれます。日本人が海外に行っても読めるし、その逆もまた真なりです。以下に示します。

その他の記号も説明した詳しい資料は、こちらよりpdfファイルでダウンロードできます。

ここから使い方の説明です
ここではごく基本的な技術しか説明していません。もっと高度な技術(例えば直進、エイミングオフ、コンタリング)については「本の紹介」にある本などを参考にしてください。

地図と現地の方向を合わせよう:学校の地理で習って以来、地図は北を上にして見るのが当たり前になっているでしょう。しかし自分が移動するための道具として使う場合は、自分の正面に見えるものが地図の自分から離れた先のほうにあり、自分の右にあるものは地図上でも右側に見えるようにするのが効率的です。頭の中で地図を回転させる必要がなくなるからです。下左図は東京駅付近の高層ビルで富士山を正面に見ている人を上から見た模式図です。富士山の手前には渋谷のマークシティが、左60度にはレインボーブリッジが、右30度には新宿の高層ビル群が見えます。その時、下右図のように地図を持つと実際に見える景色と地図を対応させるのが容易になります。これを「正置する」あるいは「整置する」といいます。どこかで、この作業を見たことありませんか。そう、カーナビです。カーナビは自動正置装置なのです。

高層ビルの上で大きな特徴のあるものが見れるような場合は、正置も容易なのですが、見通しの効かない森の中では簡単ではありません。しかし、コンパスを使えば誰でも機械的な作業でこれを行うことができます。方向音痴なんて全く関係ありません。下左の図のようにコンパスの磁針と地図の磁北線を揃えるだけです。

市販の地図でも、googleやyahooなどのサイトの地図を印刷したものでもあれば、どこでも練習できます。街中でもコンパスと一緒に持って歩いてみましょう。現地と地図を合わせるという事が実感できるでしょう。

ただ初めてやろうとすると、一所懸命コンパスを回すというのは良くある話です。コンパスを回しても駄目、地図を回しましょう。電車の中など車体が磁気を帯びていてコンパスが正しい向きを示さない場合もあるので、注意しましょう。また、O-MAPでない場合は、すこし方向がずれますが、それはこれから説明します。

実は、正確な正置を行うためには、地図に磁北線が引いてある必要があります。O-MAPは磁北線が描いてあります。一般の地図は真北(自転の軸)が地図の上になっています。磁北とは、地磁気の磁力線の向かう方向のことで、場所によって異なっています(「地磁気を知る」参照)。沖縄南端で3度程度、北海道北端で10度程度、西に偏っています。

「地磁気を知る」のWEBサイト(国土地理院)に偏角の地図があるので、下図のようにやれば磁北線を引くことができます。



 
国土地理院の偏角地図の一部 代々木公園の地図に磁北線を引く(地図は昭文社スーパーマップルより)

ルートをたてる: ある地点から目標とする次の地点へのルートを立てて実際にたどることの繰り返しでゴールまで到達するのがOLです。ルートは体力、技術力に応じて決めるので、人によって異なっても不思議ではありません。例えば、下図<1>のように両地点の真ん中に大きな山がある場合、下図<2>のように真ん中が通行困難な場合、初心者でも経験者でも、遠回りになっても道を行くルートを立てるでしょう。では下図<3>のようだったらどうでしょう。コンパスの扱いに慣れていない初心者なら、道を行くのが無難ですが、経験者であったら森を直進するルートを立てるでしょう。

失敗して現在地を見失ったら、すぐに数分たってしまいます。しかし数分を走って取り戻すのは大変なことです。自分が確実にこなせるルートを立てるべきです。

<3>の図の緑の線が初心者向けのルートです。道の分岐Cで西に曲がるわけですが、これをどうしたら確実に行えるか考えてみましょう。大きな自動車道路なら、見逃すとか、地図にないけれど似たような道があるという事はありません。しかし分岐Bの小径の入り口に草が生えていたりすると見落としてしまいDで曲がってしまうかもしれませんし、Bの手前で大会で多数の人間が同じところを通るとそこが小径のように見えてBで曲がってしまうかもしれません。なので単に2番目の分岐というという考えだけで判断しようとするのは危険です。何か他の特徴物と組み合わせて判断するのが安全です。この場合だったら、建物を越えたところにある分岐という判断が出来ます。有効な特徴物がない場合は、この後で説明する歩測が使えます。

<3>の図には道の分岐Aがあります。これは何でしょう。「チェックポイント」として使える場所です。チェックポイントとは、離れた地点に向かう際に、その途中にあり、確実に位置を確認できる地点のことです。チェックポイントは必要に応じて複数設定します。大きく間違いようのないチェックポイントがあれば、そこまでは全速で走れます。またチェックポイントが確認できていれば、コントロールが見つからない場合も、前のコントロールまで戻らないで済みます。

距離を把握する: レーザー測距計なんてものもありますが大会で使うのはルール違反。伊能忠敬も使った歩測を使います。普通「複歩」と言って右左セットで1と数えます。100mを何複歩で走れるか、歩けるか、調べておきましょう。歩幅は広めのほうが安定します。足場の悪いオフロードと、舗装された道路では歩数は変わってきますが、練習しておけば安定します。当サイトの地図画面の「書く」機能で地図上にルートを描くと距離が計算されて表示されますので、これで街中でも歩測の練習ができます。

大会では、会場からスタートまでの間に歩測区間といって、50m、100mが判る区間が用意されていることも良くあります。

縮尺:山や森の中では1:10000が、公園では1:5000が多く使われます。それぞれ地図上の1cmが、100m、50mになります。実際の縮尺は大会の要項やプログラムで事前に知ることができますので、地図上の1cmは何歩というところまで事前に計算しておくと、より容易に使えます。また、そういう目盛りをコンパスにつけておいても構いません。

自分の位置を常に把握する: 「地図と現地の方向を合わせ」て、「地図の表現」を確認して現地と対応づけし、チェックポイントで場所を確認し、はっきりした特徴物のないところでは「距離を把握する」ことによって、常に現在地を把握できるはずです。ただある時点で現在地が判っても、地図から目を離すと、次の瞬間には地図上のどこかを見失いかねません。これを避けるためには、親指で地図上の自分のいる場所を押さえておき、自分が移動したら、押さえるところも移動します。これをサム・リーディングといいます。右利きの場合は、左手で地図を持ち、左手の親指で押さえる人が多いです。これも街中でも充分に練習できます。

   
親指でのサム・リーディング
指の右の道にいる場合
サム・コンパスでのサム・リーディング
このようなはっきりした道の場合
コンパスなしでも道で正置できるが
そうでない場合、サム・コンパスは
片手で使えて便利

どうミスを減らすか?: 「常に現在地を把握できるはずです」と書きましたが、これが難しいのがOL。簡単だったら、逆にOLにはまる人はとても少ないでしょう。失敗するからこそ、また、もっとうまく出来る筈と考える余地が常にあるからこそ、はまるのでしょう。いくつか注意点を挙げておきます。

  • コンパスで常に方向を確認する。特に忘れがちなのがコントロールを取った直後です。人と競っていたり、焦っているような場合、気づいたら逆や90度違う方向に進んでいるというのは経験者でもやります。
  • 何か違うと感じたら確認しなおす。違う地点をチェックポイントと判断してる可能性あり。
  • 通過する地点としてのチェックポイントを設定すると同様に、オーバーする可能性がある場合は、目的地の先にこれが見えたら行き過ぎと判断できる地点を設定しておく。
  • 現在地不明になった時は、ああでもない、こうでもないとウロツキがち。思い切って確認できているチェックポイントまで戻るのが早道です。
  • うまく戻る事もできない時は、いるはずと思うより広い範囲で検討する。
  • 競技上は違反ですが、本当にどうしようもない時は人に聞く。撤収時間を越えて帰ってこないのは皆が心配します。あきらめましょう。地図上に書いてあれば、非常連絡先に連絡するのも手です。

大会に参加してみましょう! 「大会」という言葉で、初心者の自分には無理ではないかと思うかもしれません。しかし、そんなに心配することはありません。殆どの大会で初心者向けのクラスが設定され、初心者向けの説明もしてくれるはずです。ランニングと違って、失敗しても人の目もありません。森の中でも意外と人にあったりします。

まずはチャレンジ!といっても初心者がAクラスにいきなり参加するのは、チャレンジというより無茶です。

当サイトのTOPページから大会を探せます。適当な大会がみつかったら、しっかり要項やプログラムを読み、自宅から会場、そしてスタートまでの時間、持ち物を考えておきましょう。参加して判らない点がでたら、会場で聞いてみましょう。内容次第では当サイトでも答えられますので、どうそ。

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さあ、地図を片手に自由に走ろう