フィギュアスケート・エッジの秘密(1)

いよいよバンクーバー・オリンピックですね。

フィギュアスケートの話題と言えば、選手・ジャンプそして最近はコーチとなるけれど、エッジ、正確にはブレードの話というのは見ないので、まとめてみました。

エッジ、ブレード:
一般にエッジと言うけれど、正確にはエッジというのは氷に接する部分のことで金具全体はブレードと言います。ブレードって包丁みたいな1枚刃だと思ってますか?1回も経験がないと、そう思ってるかも知れませんね。これについては後ろのほうで説明しました。

基本的な形:
ブレード全体
写真のとおりで、靴底の板とそれに直角に溶接された縦の板からなり、爪先の部分にあるギザギザの部分をトウ・ピック(Toe-Pick)といいます。日本では単にトウで済ましたりしますね。靴底の前部の板が写真では穴が明いてないですが、一般には明いています。フィギュアスケートでは縦の板は一枚板ですが、スピードやホッケーは一枚板ではありません。フィギュアスケートでも一枚板でない型もでてきていますが主流にはなってません。スピードは現在ではスラップといい踵がブレードと離れるように機構部分もあるので、複雑になっています。このため、今一番靴が高価なのはスピードスケートです。なんと2030万円程度するようです!

初心者用と選手用の違い:
初心者用と選手用の違い
トウ・ピックの大きさが全然違い選手用は大きくなってます。また、初心者用ではかなり踵を上げないとトウ・ピックが氷に当たらないのに対して、選手用は少し踵を上げただけで氷に当たります。どんなスポーツでも上級向けの道具を初心者が使いこなるものではありませんが、フィギュアスケートも同じです。スケートは横に押して進むのだけど、人が歩き走りする動きは基本的に踵をついて爪先に抜ける縦の動きなので、初心者はスケートを履いても縦に動し、選手用ブレードだとトウ・ピックがひっかかってバタバタ転んでしまいます。札幌の大倉山ジャンプ台のところにウィンタースポーツミュージアムというのがあり、スピードスケートの練習用ですが「横に押して滑る」を繰り返す動作の体験ができます。
余談ですがフィギュア・スケートのスピンの体験装置もあります。ただ、この装置の出来はもうひとつですね。軸を出す感覚を得るのがスケートとは別物です。

ブレードって鋼板をプレスで打ち出せば良いの?:
ブレード形状
そう単純ではないんですね。ブレードの厚さは一定ではありません。
下の図のように厚さが変化しています。前後方向の厚さの変化は片足でターンする際のやり易さのためです。ターンは水平方向の転がり運動といえるので、この厚さの変化は力学的にも妥当といえそうですが、どの程度の裏付けがあるのか不明。最近は逆の厚さ変化のあるもの(Perabolicオプション付きのエッジ、後記参照)もあります。
断面は図のようになっていて、包丁のような1枚刃でなく、2枚刃という感じです。ひげそりは今や3枚刃、4枚刃なんてのもありますが、スケートはあくまでも2枚刃です。
氷に接する面は、直径15mm程度の円弧の溝があります。一般的にはグラインダーをかけた後に丸砥石で砥ぎます。
この写真のエッジでは、厚さは高さ方向でも変化しています。
またトウ・ピックの形も色々あります。

シングル・ペア・ダンスで違うの?:
シングル・ペアは同じですが、ダンスは違っています。基本的にジャンプはないのでトウ・ピックは小さく、踵部分が短めになってます。もっともシングル用でダンスをする選手もいるようです。

選手の使うブレードってどこのもの?:
多くつかわれるのは英国製のジョン・ウィルソン(John Wilson)というブランドと、やはり英国製のミッチェル・キング(Mitchel&King、略してMK)。日本製ではサンエス(SSS)というのがあるのですが、選手が使うのはもっぱらスピードに限られ、ホッケーやフィギュアは初心者向けです。ではジョン・ウィルソンやMKと言えばエッジは1種かというと色々あります。やはり入門者向けから上級向けまであります。シングル・ペア選手用の代表的なのは、ジョン・ウィルソンではゴールド・シールとパターン99、MKではゴールド・スターとファンタムでしょう。ゴールド・シールとゴールド・スター、名前にゴールドが付いてますが、普通の銀色のものの他に金色のものがあります。純金モデルは高価で...なんてある訳ないですね、強度が出せません、メッキです。選手の入門レベルでは、ジョン・ウィルソンのコロネーション・エースが良くつかわれます。

この両ブランドにはいくつかオプションが設定されてます。
K-pick:特にトウ・ジャンプがしやすいような大きなトウ・ピック。
Parabolic:ブレードの前後部分が厚く、中央部分が薄いもの。なんでこういう形状にしているかの説明はこちら(英語)をどうぞ。

各ブレードの簡単な紹介ページがあります。ジョン・ウィルソンはこちら、MKはこちらです。価格はコロネーション・エース3万円からゴールド・シールなど9万円程度です。どうも、これらのWEBサイトをみてみると、両ブランドは元々別会社だったのが、未確認ですがどうも会社としては1社になったようです。

テレビでみて、どのブレードかわかる?:
モデル名など
こんな感じでブレード側面にマークがついてますが、ハイビジョンでスローでもなかなか判らないでしょうね。ただし、少し判る可能性があります。金色であれば、ゴールド・シールかゴールド・スター、前のプレートに穴がなければゴールド・シール、トゥ・ピックの上側が反ったカーブであればパターン99。こんな所でしょうね。ブレードの拡大画像があれば、ブランドもモデルも判るのですが、そこまでのテレビはみた事ありません。

博物館行きのブレード:
パターン88
こちらのブレードは、今や売ってないし、そもそも一般には競技が行われなくなくなってしまったコンパルソリー用(図形を描く競技)のものです。コンパルソリーは札幌オリンピックの時には少しテレビで放送された事があります。このブレードはフリー用のパターン99の姉妹モデルといえるパターン88で、特徴は写真から判るように、台の部分とエッジの部分が分かれていてボルトで固定されているところ。こういうブレードはこのモデルのみで他にないはずです。エッジ部分は3種類あって付替え可能でした。ひとつはこのブレードオリジナルのパターン88というループ図形(秘密(2)参考)に向いたもの、そして写真の一般的な図形向けのテイラースペシャル(単体のブレードもありました)、そして残りは確かパターン99だったと思います。実際に付け替えて使っている人がどれだけいたのかは判りません。自分が持っているエッジもテイラースペシャルのみ。コンパルソリーとフリーとで靴毎変えるのが一般的でした。

(2010-2-24追記)
選手のブレードで判っているもの
ゴールドシール:ジュベール(NHKの特番より)、安藤美姫(TBS朝ズバ)
パターン99:浅田真央(TBS朝ズバ)
ゴールドスター:キム・ヨナ、村主章枝(TBS朝ズバ)
今日は村主姉妹がTVで持ててました。
朝は村主章枝が朝ズバに、夕方は村主千香が日本TVに出演。

「フィギュアスケート・エッジの秘密(1)」への1件のフィードバック

  1. フィギュアスケーターたちは、
    氷上で非常に流麗にスライドされ、その美しい姿に毎回
    感動をいたしております。
    個人的には「伊藤みどり」さんの「氷上の姿」が力強く
    ダイナミックで好きでございました。

    さて
    フィギュアスケートは
    物理的には「氷を刻む」…、
    技術的には
    「フィギュアスケーター」と
    「エッジやトウ・ピック」と
    「地球コア中心」と
    一直線に結ばれる重心をとっている…、

    この時、氷上では、
    エッジやトウ・ピックの「最先端:氷と触れる点」
    において【氷上と直角の角度をなす】と考えて
    宜しいでしょぅか。

    でなければ転倒と相成りましょぅね…

    人体で以って
    「重力と遠心力・慣性や作用反作用の証明」と
    申しましょぅか…
    地上の全てに共通する(普遍)ことでございます、
    各使用する道具で異なり、困難さも異なります…

    誠におそれ要りますが、
    フィギュアスケートにおける
    ・エッジやトウ・ピックの「最先端:氷と触れる点」
    ・【氷上と直角の角度をなす】、
    このところをお教え願えますれば、幸甚に存じ上げ
    ます。
    かしこ

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